舵手マニュアル

当マニュアルは香港日本人ドラゴンボートクラブの活動中に舵手を務める際の留意事項をまとめた
ものである。
1.基本事項
● 舵手を務める際は艇と乗艇メンバーの安全を第一優先とする。
● 艇の運行はドラマーと舵手が連携して司るが、最終的な操舵の判断は舵手自身が行うも
のと心得ること。
● 乗艇時、下船時は艇が不安定になることから、練習時・試合時を問わず、舵手は最初に乗
艇、最後に下船し、艇の安定を図る。
● 急な操舵は艇の転覆に繋がるので厳に慎むこと。
● 操舵時は視野を広く保ち、常に周囲の状況を把握する。
● 波に対しては45度以上の角度を保つことを心掛ける。また、後ろからの波にも常に留意す
る。
● 洋上で停止中に大きく波の影響を受ける場合はパドラーにパドルで海面を押さえるように
指示すること。
● 航行中の浸水は最小限に留める。浸水があった場合はこまめに水出しを行うようにパド
ラーに指示すること。
2.タイタム練習時
● 乗艇時に必ず救命浮き輪、桶、ロープが装備されていることを確認する。
● 短時間であっても艇を離れる時はロープで艇を係留する。係留の際は可能な限り、前後2
ケ所で結ぶ。
● 複数艇で練習する場合、可能な限り互いに近くで練習し、僚艇が目視できるように努め
る。
● 乗艇前に当日の潮の状況を確認する。潮が引いている時は水深の浅い場所には近づか
ない。
● 練習での航行は岸から一定の距離を保って(岩礁から離れた所を)航行するようにする。
● 常に座礁には留意し、船底を傷付けないように気を付ける。
● 可能な限りその日の練習メニューを把握し、効率的な艇の運行に努めること。(タイムトライ
アルが始まる時にスタート地点付近にいる等)
● 稀に途中乗艇、途中下船のメンバーがいることがあるので、練習前にその有無を確認し、
効率的な艇の運行に努めること。
● 洋上で僚艇と接舷しメンバーの乗り換え等を行うことがある。対面で接舷する場合は相手
の艇の向かって左側に(双方の艇の舵が外側に来るように)接舷すること。
● 常に天候に留意し、天候が悪化する可能性がある時はビーチから遠く離れないこと。ま
た、落雷の恐れが出てきた時は速やかに練習を中止し、茶屋に非難すること。
● 常に波の状態に気を配ること。波が荒い場合は沖へ出ずに湾の内側で練習すること。ま
た、モーターボートが多い場合も波が荒れるので、モーターボートの動きを読んで波の影
響の少ない場所で練習すること。
3.大会参加時
● 主催者が配付するルールブックは必ず目を通すこと。
● 最初のレース開始前にその日の艇、舵の席、スタート、ゴール、コースの状況等の把握に
努めること。
● 大会によってはスタート地点までの航路等が細かく規定されているので留意すること。
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● 舵の席に着いたら、舵そのものや舵の取り付け状況をしっかり確認し、問題あれば即座に
主催者に是正の依頼をすること。
● スタート地点までの航行がウォームアップ、スタート練習等の貴重な時間になることが多
い。ドラマーの意図をくみ取り、状況を見ながら航路を選ぶこと。(場合によっては多少遠
回りしてレーンに入ることもある)
● レーン入りする際は他の艇の動きを見極め接触しないように注意する。その為に自艇の
レーン番号はもとより、近隣にいる艇のレーン番号も把握しておくと良い。
● レーンに入ったら必ずトランジット(艇の進行方向)を確認すること。ブイの配置状況によっ
てはコースを勘違いすることがあるので、慎重に見極める必要がある。
● 漁民系のレースでは途中のブイが無いことが多いので、ゴールをしっかり確認すること。
● スタートを待つ間、波風が強い日は容易に艇の方向が変わるのでこまめに方向修正する
こと。
● レーンに入ると舵の操作だけで艇の方向を変えることが難しくなる。通常はドラマーがパド
ラーに適切な指示を出すが、指示が遅れがちな場合は舵手からもパドラーに声を掛ける。
● スタート地点の舵ポジションの形態は大きく「1.ポンツーンでバーを掴む形態」、「2.海中
(ブイ)から延びるロープを掴む形態」と「3.上からぶら下げられたロープを掴む形態」の三
つに分けられる。(まれに舵側には掴む場所が無いケース、また長距離のレース等では
ランニングスタート等もある)
● ポンツーンでバーを掴む形式(国際ドラゴンボート連盟の標準形態)の場合、スタート時に
バーを引っ張ったり押したりすると失格となる場合があるので要注意。
● ロープを掴む形式の場合、スタートを待つ間に艇が流され易い為、波風の流れを見極め
て極力風上側にレーンインすることが望ましい。また、スタートまで長時間待たされる時は
ロープをお尻の下に敷く等の工夫によって体力の温存と艇の安定を得ることができる。
● 多くの大会の場合、ルールブックに「舵手は艇に推進力を与えてはならない」との記述が
ある。体重移動程度は問題ないと思われるが、あまり激しい動きをすると他艇からのクレー
ムの対象となる可能性もあるので要注意。
● レース中は舵による抵抗を極力減らすため、不要な時は舵を上げるべく努力する。
● 特にレースの舵に不慣れな場合、舵が効かない気がして舵を切り過ぎて船が急角度で曲
がってしまい、焦って逆に舵を切り過ぎて、結果として船を蛇行させてしまうことがある。舵
は落ち着いてこまめに。「言うは易し」だが、焦りは禁物。
● 自艇がレーン内に収まっていても他のレーンの船が侵入して来ることがある。その際は躊
躇なく隣のレーンに退避して構わない。他艇との衝突を避ける為に隣のレーンに入っても
失格の要件とはならない。
● スタンレー大会等ビーチ乗艇の大会の場合、艇は海岸に対して直角に泊めることが義務
付けられている場合が多い。
● 大会によってはゴールから岸壁等への距離が短いことがあるが、急な舵は禁物である。状
況によっては船を止めるようパドラーに指示する。
● 長距離レース等の場合、コーナリングを伴うレースもある。事前にドラマーと進路、戦略を
打合せ、安全第一のコーナリングを心掛ける。
以  上
【2020年4月初版策定】
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